霊と誠

釈尊が「明けの明星」を見たという記録と、それを伝承していたという文献的な記録があるに違いないのですが、現在までそれが埋もれているのです。これは恐らく、千年王国の初めに発見されるでしょう。釈尊が見た「明けの明星」についての私の見解は、間違っていないでしょう。多少修正する部分があるかも知れませんが、基本的には間違っていないのです。

「明けの明星」について知っている人は、日本には沢山いるでしょう。それと新約聖書を結びつけるという人がいなかったのです。これとユダヤ人問題とが重大な関係になっているのです。

東洋文明の生粋と西洋文明の根底との両方を掴まえなければいけないのです。東洋文明の生粋と言えるのは釈尊の明星の諦観です。一切空という考え方が新約聖書の底を貫いているのです。神は現世を認めていないのです。

新約聖書を正確に理解するということは、大変難しいことです。アジア人の流れを良く検討していかないと、本当のことは分かりません。

本当のメシアはどのように現われるのか。「明けの明星」を見た釈尊の伝承が、そのまま東方の三人の博士に伝わっていた。そのように考えなければ、三人の博士がメシアの降誕のことを誰から聞いたのかということです。どうしてそれを発見したのか。また、イエスが全世界のメシアであるとして、なぜその人を東方のインドからユダヤの国へ拝みにきたのかということです。

イスラエルに生まれた赤ちゃんが、全世界のメシアであるという三人の博士の認識は、一体どこからきたのか。この説明が、全世界の哲学者、宗教家に、全くできないのです。東方はペルシアであっても、アフガニスタンでも、あるいはインドでも、異邦人の世界です。異邦人の世界に、メシアの降誕ということが、どうして伝わったのか。どうしてそれが伝承されたのか。

釈尊が「明けの明星」を見たことによって、インドの一角に、神の光が差し込んでいたのです。これしか考えようがありません。釈尊が出現したのは、紀元前五百年くらいです。インドには釈尊が現われた。その頃中国には、孔子、孟子、老子が現われています。この中で哲学的に傑出しているのは老子です。

その頃、ギリシアでは、プラトン、アリストテレス、ソクラテスが現われているのです。ギリシアとインドと中国において、ほぼ同時代に、文化的な中心の国家において、言いあわせたように、三人の巨人が現われているのです。

これは偶然という見方をする人もいるでしょう。しかし老子の思想、そしてソクラテスの思想は、新約聖書への前提の思想になっているのです。ここに釈尊の一見明星の思想が加わると、新約聖書の源流というものが何かが分かるのです。この時代の異邦人から傑出した人々が残しておいた足跡が、そのまま新約聖書の源流になっているとさえ思えるのです。

これはユダヤ人が暫くの間神から退けられて、異邦人が直接神を信じることができるような時代が来ることを、見越していたような神の処置であるとさえも言えるのです。こういう世界の歴史の流れというものと、新約聖書の成立過程とは、重大な関係があることを、よく承知して頂きたいのです。

イスラエルのユダ王国が滅亡した時に、三人の巨人が現われていて、来るべき新約の時代を予告するような見解を持っていた。こういう点を考えてみると、現世に対する神の考え方が、おぼろげながら想像できるのです。

エデンの園で人間は、決定的な失敗をしてしまったのです。決定的な失敗とは何かと言いますと、霊魂が死んでしまったということです。霊魂が死んでしまったということを踏まえて、現代の文明ができているのです。エデンの決定的な失敗を、現代人は黙って鵜呑みにしてしまっているのです。

エデンの園でアダムとエバは、神から死ぬから絶対に食べてはいけないと言われた、善悪を知る実を食べてしまった。その結果人間は死んでしまったのです。霊魂は死んだが肉体は生きている。肉で生きているのです。人間が肉で生きているということは、魂的に生きていないことを意味している。幻であることを意味しているのです。

ダビデは、「人はその盛んな時でも、息にすぎません。まことに人は影のようにさまよいます」と言っているのです（詩篇39・５、６）。人はその盛んな時でも、幻のように生きているのです。三十代、四十代の盛んな時でさえも、実は幻のように生きているのです。

これはどういう事かと言いますと、現世に生きている人間は、全部肉の人間です。肉の人間は全部幻です。虹の契約がこれを意味しているのです。

現在の人間の命は獣と同じものであって、こういう者たちの存在を虹として認めてやろうと言っているのです。虹として認めるということは、幻として認定しておくという意味です。幻としてとはどういう事かと言いますと、肉としてという意味です。

肉は幻です。神は肉として人間をかろうじて認めているのです。ところが人間の方では、肉として認められていることを、得得として承認しているのです。肉的に生きている者を、現在の人間はまともな命だと考えているのです。これは神の御心と正反対になるのです。

虹の契約をよくよく考えると、人間はいないのです。ただ生物があるだけです。偉そうに、文明とか理性ということはないのです。今の人間は文明も理性もない。学理学説と大げさなことをいう値打ちは全くないのであって、そういう存在にすぎないものを、神は仮に認めているのです。本格的に人間を認めているのではないのです。

これが虹以後の人間であって、アブラハムに与えられた約束において、本当に神の前に歩む者ができたなら、その者を全き者として認めてやろうと言っているのです。わが前に歩みて全かれというのは、わが前に歩む者だけを全き者として認めてやろうという意味と、おまえたち自身が私の前に歩むことによって、全き者になるだろうという意味と、二通りの意味があるのです。人間に呼びかけている意味と、神自身の決意、心づもりと、二通りの意味があるのです。

とにかく、神の前を発見した者だけが、全きものになるのです。実は神の前に生きるという事だけが、約束を意味するのです。神の前に歩む者だけを、約束の受け取り手としてみなされるのです。わが前に歩めというこの言葉が、約束の受け取り手を意味するのです。

全き者でなかったら、神は約束を与えないのです。従って、自分が神を信じるという信じ方を、神は認めないのです。神に全き者として認められた者でなかったら、約束の受け取り手として認めていないのです。そういう考え方で、神はアブラハムに約束を与えているのです。このことをよく知って頂きたいのです。

現在の人間は、生きていると思っていても、ただそれは肉体だけのことであって、魂はエデンの園で死んでしまっているのです。死んでしまっている者が、死んでしまっている者だけが集まる世界に生まれてきたのです。これが現在の地球です。しかし実体的には存在していない。幻の地球です。この世界に生まれてきたということは、自分が死んでいることを確認するためなのです。神は現世認めていないのです。幻の地球を神は認めていないのです。幻の人間を認めていないのです。

アブラハムのように、本当に神の約束を受け取ったごくごく少数の人間だけを、神は認めようとしているのです。今の全世界の人間を、神は認めていないのです。だから全部火の池へ行くことになるのです。

エデンの園というのは、前世であって、エデンの東というのは今世ですが、エデンの東というのは仮の国を意味するのです。この世がエデンの東であることを意味するのです。現世は死んだ人間ばかりがいる所でありまして、神の掟を破った犯罪人ばかりがいる所です。だから現世では、泥棒、窃盗、放火、汚職、殺人などの犯罪が絶えないのです。

現世にいる人間は全員、間違いなく死んでいくのです。これは死刑囚を意味するのです。地球は死刑囚ばかりを収容する巨大な強制収容所になっているのです。このことを正しく認識すると、現在の人間は神の前にいる資格を持っていないことがお分かり頂けると思います。

わが前に歩みて全かれということは、この世では全く通用しないことばです。神の前に歩もうと思えば、現世を出てしまわなければならないのです。現世を出てしまうのです。自分はこの世に生きている人間ではないことを考える時、初めて、神の前に生きることができるのです。その時に初めて、本当の愛が分かるのです。

この世を去ってからでも、永遠に続く愛とはどういうものか。愛は現世のものとは違うのです。男女の愛を、そういうように受け取るべきです。また、生きていることが神に愛されていることだということが聖書に書いていますが、生きているというのは、現世に生きていることを意味しないのです。霊において生きていることを言うのです。

「神は霊であるから、これを拝するものも、霊と誠を持って拝しなさい」とあります（ヨハネによる福音書４・24）。霊と誠をもって聖書を読むのでなかったら、約束も神も全然分からないのです。

そこで、霊と誠を持って神を拝するとはどういうことかということです。霊と誠を知るためには、まず人間が造られたということの本然性を理解する必要があるのです。神が人間を造ったことの本然性、人間から言えば造られたことの本然性とは何か。神はどういうものとして人間を造ったのかという神の心構えが分かっていなければいけないのです。

言(ことば)というものは生まれたものです。これは造られたという意味を相当強く持っているのです。言は万物のいや先に生まれたとパウロは言っていますが、万物のいや先にということは、造られたものの一番最初ということです。造られたものの一番最初ということはやはり造られたのです。

生まれたというのは神が生んだのですから、生んだというのと、造ったというのは違います。違いますけれど、やはり神が造ったということと同じことになるのです。

神は意志です。ウィル（will）であって、ウィル独特の性能を持っている。これはワード（word）にはならないのです。ワーク（work）にもならないのです。ウィルというものは意志であって、この意志を展開するためには、理性的な働き、言語的な働きというものがどうしてもいるのです。

ウィルは原理の決定にはなりますが、原則的なものにはならないのです。原理というのは基本的な意味での原点であって、原則というのは基本的な原理がどのように法則を持つかということです。だから原理というものと原則というものとは、意味が違うのです。

原理が原則として展開するためには、理性的な展開、言語的な展開が必要になってくるのです。ウィルによってワードが生まれた。御心によって言が生まれたというのは、自然なことです。

神はありてあるものですから、ありてあるということは無期限に、無始無終にありてあるのです。これは初めも終わりもないのです。ただあるのです。

ところが言になると、初めがあるのです。言が必要になったから、言ができたのです。従ってこれは、無始無終という意味ではない。初めに言があったと言っているのです。こういう点が非常に理性的、論理的です。

父なる神はありてあるお方であって、言の神、子なる神というのは、無始無終ではなくて、初めがあったのです。この順序、父なる神と子なる神とのあり方をじっと黙想すると、人間存在についての秘密が分かるようにできているのです。

イエスという人のいい所は、自分の思想や自分の意見を出そうとしていない点です。イエスは父のなさることを見て、自分もそれをしていると言っているのです。父の御旨にだけ従って発言したのです。イエスは自分で考えなかったのです。自分で思考しようとか、思念しようとかをしなかったのです。生きていること、生かされていることがそのままイエスの思考になっていたのです。

生かされていることがそのままイエスの考えになっているのです。だから神に生かされているということが、そのまま彼の思想の原点になっているのです。

これはうらやましい事です。考える必要がなかったからです。生かされていることがそのまま論理性の展開につながっていくのです。これは正確な論理になるのです。絶対に脱線しないのです。自分が生かされているという実体をそのまま論理的に展開するのです。これがイエスの思想傾向でした。

イエスは自分自身で考えて、論理性や理論性みたいなものを造る必要がなかったのです。これが彼をキリストにした原理になっているのです。

アダムはそれをしなかったのです。彼は生かされていながら、自分の内側を見ていたのです。アダムの場合はそんなことをする必要がなかったのです。生かされているだけで良かったのですが、自分の内側を見ようとばかりしていた。神の処置から考えて、彼が不完全な人間の祖先としての典型になるということが神の御心であったかもしれないのですが、とにかく彼は自分自身の思いに捉われる所があったのです。

これが、人一人は良からずという神の嘆きになって現われているのです。人一人なるは良からずというのは、自分の中に閉じこもってしまうからです。自分の思いに閉じこもってしまって、精神を自分自身の外側に発散しようとしていないのです。発散といういい方は御幣があるかもしれませんが、生かされているという色々な条件、状態です。これをそのまま自分自身の命にしようとしないで、外側の条件や状態を見なかったのです。自分の気持ちに、自然に閉じこもっていたのです。

アダムは原罪を持っていたのではありません。どうして内側に閉じこもったのか。どうもその原因が分かりませんが、アダムは豊かなエデンという条件を与えられていながら、それを見ようとしなかった。自分の気持ちの中に閉じこもっていたのです。これは前世のことですから、今の世に生きている私たちの気持ちで類推しようとしてもできません。とにかくアダムは自分の中の方へ気持ちを向けていた。一人ぼっちだったのです。インマヌエルという事実が全く分かっていないのです。

神が共にいることが分かっていたはずです。分かっているも分かっていないも、現実に生かされている光景を見れば、父なる神がそこにいるに決まっているのです。アダムにはそれが分からなかったのです。これは、新約時代の現在に置かれている人間に、非常によく似ているのです。皆様が現在生きている条件を考えてみて下さい。自分が生きている条件を考えたら、インマヌエルということが分かるはずです。

三度の食事のことをいちいち心配しなくても、毎日備えられている。自然に備えられているということが、父なる神によるに決まっているのです。おのずから与えられているということが父です。おのずからということが、ありてあるということの本性です。ありてあるということの本性が、おのずからという意味です。

私たちはおのずから与えられているという条件を第一主義にして生きているのです。空気もあるし、水もある。太陽もあります。雨が降るということもあります。おのずからということを、私たちは認識せずにおられないような形で生きているのです。

従って、おのずからを認識するということは、何の思案も、苦労もいらないのです。おのずからを条件にして生きていること、生かされていることが、人間のあり方です。自分自身の命の本性を自分で見られるような形、つまりインマヌエルという事実を、簡単に認識できるような条件を与えられているはずです。

そういう条件がありながら、それを認識しようとしない。こういう人は本当に損です。そうして自分自身の中を覗きこんで、自分の個性があると思いこんでいるのです。自分の力、自分の知恵があると思いこんでいるのです。そう思っているために、自分の力で分からないと考えるのです。

生かされているという事が、自分の霊です。生かされているという事によって神を見るのです。これが霊で神を見ることになるのです。霊と誠というのは、まず自分が生かされているという事実に基づいて神を見るのです。これが霊によって神を見ることになるのです。

そうしますと、インマヌエルという事実は、ごく自然に分かるのです。神が共にいますという事実が分かるのです。神が共にいなければ、生きているという実体が展開するはずがないのです。

ところが人間は、そういう条件で生きているのは当たり前だと思っているのです。これが人間の一番悪い癖です。当たり前だいう考えが、不敬虔、不信仰の典型です。太陽が照っていて当たり前、毎年米ができて当たり前、魚が獲れて当たり前、野菜が採れて当たり前と思っているのです。

現実にそれを経験していながら、それが天然だということが分からないのです。天然が自然になっているのです。天然とはおのずからです。おのずからがそのまま自然になっているのです。自然というのはおのずからしかりとすることであって、おのずからというのは、天然のことをさしているのです。天然が自然になっているのです。

私たちが天然自然の中で生きていること、私たち自身の生存状態がそのまま霊になっているのです。いちいち考えたり、思ったりしなくても、自然にできるようになっている。これが認識できないというのは、父が存在していることを人間は全く考えようとしないからです。キリストはまだ分かりやすいのですが、父なる神を意識していないのです。

主の祈りの一番最初に、「天にまします我らの父よ、願わくば御名を崇めさせたまえ」とあります。御名を崇めるということは、御名を清めることです。

神は悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、雨を降らしているのです。人間は雨が降るのは当たり前だと思っています。ところが、当たり前ではないのです。雨が降るというこんな奇妙奇天烈な現象は、宇宙広しと言えども地球にだけしかないのです。地球以外に、雨が降っている惑星はないのです。それを当たり前だと思っているのです。

自分が生まれたのは当たり前、雨が降るのは当たり前、米が毎年できるのは当たり前、豚が太るのは当たり前と、何でも当たり前に考えているのです。

これをやめることです。やめないと、やがて大変なことになるのです。皆様は、極めて素朴な考えから、もう一度出発して頂きたいのです。これが霊において神を拝するということです。

私たちの肉体生活というものは、霊によって生かされているということの上に成り立っているのです。霊の生活が下敷きにならなければ、肉の生活はあるはずがないのです。霊を下敷きにしないで、肉は絶対にありえないのです。

私たちの肉の生活があるということが霊であって、この霊に従って神を見るのです。これは最も平明な、当たり前のことですが、この平明な当たり前さが分からない。生きているのは当たり前と思っているからです。霊的に生かされている有難さの方に当たり前という目を向けないで、肉の生活があることが当たり前だと思っているのです。

当たり前というのは恵みを与えられていることの構造性です。これを見ようとしないで、人間の常識で考えようとする。生かされていることに目をつけないで、自分の常識で判断しようとする。この考えがいけないのです。常識で自分の命を見ようとする。これがいけないのです。

誠というのは、普通にあるべき状態、普通にあるべき天体現象です。例えば太陽系宇宙の他の宇宙のようなもの、アンドロメダ星雲が星雲であるということが普通です。普通というより天然と言った方がいいかもしれません。

太陽系宇宙は、神の御心がそのまま現われているのです。霊というのは父なる神のあり方です。誠というのは父なる神の御心です。これが太陽系に現われているのです。

太陽系宇宙には特殊な現象があるのです。これが父なる神の御心の現われです。これを認識するのです。霊なる神の御心が表面に押し出されているのです。これはキリストではなくて、父なる神の方です。この霊と誠というものを一つにすると、御名になるのです。

神のあり方が霊であって、神の御心が誠です。この神の誠を自分の心にとめて、それを生きるのです。例えば神の御名を崇めることは、神の御心を生きることなのです。自分の思想で生きようとしないで、神の御心を行うような気持ちを持とうとしただけで、そうなってしまうのです。

「神の御心を行う者は天国に入る」とイエスが言っています。自分の心を行っている者は地にいるのです。神の御心を行おうという気持ちさえ持てば、それだけで天へ行けるのです。これは簡単なことです。神の御心を行おうと考えただけでいいのです。

女性が預言者としての務めを果たそうと思ったら、積極的にこういうポイントを押さえて、それを自分で生きこなしていかなければならないのです。まず神の御心を認識して、それを生きようという原理的な気持ちを持つことです。神の御心を知って、御心のように生きようとするのです。

例えば水を飲んでも、水の味は神の御心に決まっています。それを難しく考えないで、水の味が神の味なのだということを、少しでも心にとめようとするだけでいいのです。それだけで神の恵みがどっとくるのです。

御霊の助けをもらおうと思ったら、極めて素朴な気持ちで、赤ちゃんが親に対して接しているような感覚を持つ事です。私はいつもその気持ちを持っているのです。神は私が赤ん坊であることをよくご承知ですから、この程度の考えでも、父なる神がよく分かっていてくださると思っているのです。私が考えることは神から見れば幼稚なことかもしれませんが、神が私を助けて下さるから何とかなるに決まっていると思っているのです。

そのように、赤ん坊の場に立とうとするのです。そうすると自分で負担を感じなくてもいいのです。自分で負担を感じてもだめなのです。負担を感じない方が楽です。極めて自然に、神を崇めるという癖を自分でつけてしまうことです。それが天国です。父の御心を行おうとするだけで、もう天国へ入ってしまっているのです。こう考える方がずっと楽です。

私たちが信じても信じなくても、リビングということが天国なのです。目で見ていること、耳で聞いていることが天国なのです。

神は愛の対象として人間を造ったのですから、人間が生かされているリビングということは、恵みに決まっているのです。天国に決まっているのです。神は天国を味あわせよう、恵みを味あわせようと思って、愛の対象として人間を造ったのです。

ですから、自分は恵まれる資格があるものと決めてしまったらいいのです。そのように、極めて自然に、理屈を言わずに、神の前に立ってしまうのです。これが神の前です。わが前に歩めというのは、これだけのことです。

神の前に立つというのは、人間自身のプレゼンスが、わが前になっているということです。人間のプレゼンスが神のプレゼンスです。こういう感覚を持てば、おのずから霊と誠を持っているし、またそれがそのまま神の御名を崇めていることになるのです。

何が有難いかというと、神は自分の名を崇めてくれることが一番有難いのです。なぜかと言いますと、私たちが神の御名を崇めると、神の御名が清められるからです。人間が生かされているということが、そのまま御名です。これが霊です。主なる神の御心を行おうと考えることが、誠です。これは極めて当たり前のことです。

ところがこれを神の御名とは考えないのです。普通の人が当たり前だと思っていることを、皆様はこれを神の御名であると思うのです。そうすると、御名が清められるのです。

人間が生きていることが御名です。ところが生きていることを当たり前だと思っていると、清められないのです。自分が生きていること、森羅万象があること、いわゆる天地万物が神の被造物だということを考えるだけでも、御名を清めているのです。

山がすばらしいと思うことは、山と共にいる神を清めているのです。清めるというのは、それを取り出して見せるということです。取り出して眺めるということです。清めるというのはそれを洗濯することではない。清めるとはそれを認識するだけのことです。神自身の働きとして、神自身の御名として、それを認識するだけのことです。これが清めることなのです。

そうすると神がそこにいますことが、はっきり分かるのです。神がいますことがはっきり分かれば、神が清められているのです。これだけのことです。天にいます父が、万物として地に現われているのです。霊なるものが肉として現われているのです。

これを神は人間に考えてほしいのです。万物として現われている神は、人間しか認識できないからです。せっかく理性と良心を与えられて生きている人間が、それを認めるか認めないかでは、神にとっては大変な違いです。

神は霊であるから、拝するものは霊と誠をもって拝しなさいと、人間に対して誠を一字入れているのです。神の存在が霊です。その御心は誠であるに決まっています。なぜ霊が誠であるのかと言いますと、霊というものが精神的に機能する場合には、誠としてしか働かないからです。

日本人はお天道さんと、ごく自然に言っています。お天道さんという考え方が、神の霊と誠を自然に、ごく率直に、また素朴に分かりやすくとらえている認識です。お天道さんという考え方が、ユダヤ人にはないのです。日本にはあるのです。恐らくこの考え方は、日本にだけにあるのでしょう。中国には天帝という言葉がありますが、この言葉が日本へ来て、お天道さんになったのかもしれないのです。お天道というしかつめらしいものではなくて、お天道さんなのです。これがいいのです。

お天道さんという考え方の中に、神が人間を造った御心が、自然に消化されているのです。皆様もお天道さんという気持ちを持って頂きたい。人間はお天道さんによって生きているのです。

存在が霊であり、御心が誠です。神の場合は存在だけでいいのです。存在があるだけです。人間の側から見ますと、霊だけでなくて誠が受けとめられるはずです。霊なる状態を誠として受けとめられるはずです。だから人間には霊と誠を注文しているのです。

これはイエスが生きていた生きざまを、そのまま示しているのです。イエスは、私は父の御心を行っていると言っていますが、これは何を意味するかと言いますと、人間の霊魂が持っている状態をそのまま言っているのです。

人間の生態は霊魂の生態であって、霊魂の生態というのは経験するそのことです。現世の霊魂は経験することしかできないのです。経験する以上のことは必要がないからです。何を経験するかというと、生きていることを経験するのです。生きていることを経験すると、自らそれが霊であるし、誠であることが分かるのです。

霊というのは食物で言えば、形とか、色、味、香りです。誠というのは、魚や肉を食べて、味を感じます。これが神の御心を感じているのです。魚や肉の存在は霊ですが、食べると誠が分かるのです。神が人間を愛の対象として造ったということが、これで分かるのです。

愛の対象というのは、自分のあり方を相手に知らせること、自分のあり方を相手に認めさせること、受けとらせること、また感じさせることが目的です。受けとめるとか感じることを経験するというのです。

人間の霊魂はリビングです。リビングが霊魂の働きです。霊魂の働きであるリビングというのは、神を経験することばかりしているのです。リビングということを経験するのが、霊魂です。生きているということがそのまま経験していることです。これは間違いのない救いの道です。

イエスはこれを言っているのです。神が私を生かしている。神が生かしているように、私は生きていると言っているのです。この素直な言い方は、霊魂のあり方を最も素直に言っているのです。これを皆様もして頂きたいのです。

アダムはそれをしなかったのです。アダムは考えようとした。アダムは経験しようとしないで、自分自身の中を覗きこんで考えようとした。考えなければならないことがあるとすれば、生かされているという事の中で、自然に考えなければならないことは勝手に分かってくるのです。一人ぼっちにならないで、神の方からこれを考えなさいというテーマを出してくれるのです。その時は考えたらいいのです。考えたらすぐに教えられるのです。

アダムの場合は魂の本質を実行しようとしないで、自分自身が生きている状態を自分で見ようとしたのです。生かされていることがそのまま生きていることになるのです。ところが生かされていることを見ようとしないで、生きている状態を見ようとした。

アダムは神が絶対に食べてはいけないという善悪を知る木の実を、なぜ食べてはいけないのかという疑問を持ち始めた。これが生かされていることの疑問になったのです。なぜ善悪の木の実を食べたらいけないのかと考えた時、アダムは孤独になったのです。孤独ではないようにしようと思ったら、この木の実を食べたらいけないと神が言った。その言葉をそのままのみこんだらいいのです。そうすると、神の戒めの言葉と自分の心が一つになる。これが二人づれです。

なぜ食べたらいけないのかと考えたら、一人ぼっちになるのです。そう考えないで、神の言をそのまま呑み込んでしまうのです。そうすると、二人づれになるのです。一人ぼっちにはならないのです。

この時アダムはまだ陥罪していなかったが、自分の生き方を選択しなければならない責任があったのです。神が善悪の木の実を食べるなと言いました。善悪の木の実を食べるなと言われた言葉を、黙って呑み込もうとしないで、なぜそう言われたのかと考えた。考えたことがもう間違っているのです。神と別の命、二つの命を生きていることになるのです。

神が食べてはいけないという言をそのまま受けとめると、二人で一つの命を生きていることになるのです。疑うと、神と別の命を生きることになるのです。これがいけなのです。

男女の関係でも、指導者と被指導者の関係でも、なぜこんなことを言われるのかと考えたらいけないのです。そうすると恋愛が成立しないのです。アダムは神との間に、愛情を全然感じていなかったでしょう。愛情を感じないと言うことが、一人ぼっちになる原因です。

神は人が一人でいるのはよくないと言いましたが、これはアダムに聞えるように言ったのです。しかしアダムはそれに反応しなかったのです。愛の対象で造った人間がそんな状態であることは、よくないのです。

孤独になってはいけない。神と二人ぼっちで生きるのです。近代文明の思考方式は、考えなければならないように、人間を孤独にしてしまうのです。

人間が全く気がつかないで、最も不幸に陥れられているのは、基本的人権です。基本的人権という言葉は、孤独になれというのです。これはユダヤ人の巧妙な手口です。基本的人権という甘い言い方で、人間を孤独に押し込めているのです。

近代文明は自我意識を主張します。自分の立場を考えるのです。近代文明になればなるほど、自分が重要になって、自分に意味を見出すのです。これがエデンでアダムが失敗した原因と同じです。人権というのは見事に人間の自尊心をあぶり立てて、人間が孤独になってキリストが信じられなくなるのです。

自分の命を認める人は、天国へは行けません。現世の命を惜しむ人は、天へ行けません。天へ行きたいと思ったら、現世の命を捨ててしまうのです。捨ててもかまわないと思うことです。

人間が人間のために良いと思ってしたことは、皆悪いのです。民主主義の考えでも、老人福祉の考えでも、保健医療制度の考えでも、人間の生活は便利になっているかもしれないのですが、人間の魂はますます無視されているのです。

人間の精神が腐ったために、国家社会の没落につながっていくのです。人間が人間のことを考えれば考えるほど、人間の本質が悪くなるのです。近代文明の政治方針が人間を不幸にして救われなくしているのです。神の御名を崇めれば、生活的には苦しいかもしれませんが、心に平安があるのです。

額に汗して働けと神は命令していますが、今の人間は額に汗しなくてもいいのですから、心に喜びがないのです。希望も、望みもないのです。望みを持つ方法がないというのは、気のどくな状態だと言われなければならないのです。

希望のない状態ですから、神の御名を崇めようとか、聖書の真理を探ねようという希望がわいてこないのです。生活が楽になると、それを求めなくなってしまうのです。ユダヤ人によって、人間の魂が完全に殺されているのです。

イエスが神の御心を行うものは天国へ入ると言っていますが、天国を経験するために一番必要なことは、私たちの人格とは何かということを知ることです。これは神のペルソナの投影です。三位一体の神のあり方の投影が人間の人格になっているのです。神のペルソナが人間という形で映っているのです。それを神の霊を受けとめること、霊なる神を受けとめることが目的です。

「男の中からあばら骨が取られて、女が造られた」と聖書にあります（創世記２・21）。これは何を意味するかと言いますと、男に気がつかないものが女として現われたのであって、男が女を求めずにおれないように仕向けることが、神の処置なのです。神自身の命の息を人間に吹きこんだのは（同２・７）、神が人間を愛さずにおれないようにするためなのです。

人間を愛さずにはいられないように人間を造った。神は人間を妬むように愛するということですが、神のすべての行動が愛によってなされていることを悟らせるためです。何をしても愛の行為です。病気をしても、地震が起きても、そのことを通していつでも神は愛を教えているのです。

ところがそれを受け取るためには、神のペルソナの投影である所の人格的意識が正常に働かないといけないのです。女が女であることがあばら骨です。あばら骨が正常に働きますと、命のルーツを求めるのです。これが女性の恋愛の中心テーマです。命のルーツを求めることが、永遠の恋愛への正確な入り口になるのです。これを神は人間に要求しているのです。

人間の人格は神のペルソナの投影ですから、神の御心を素朴に受けとめること、率直に受けとめることだけでいいのです。考えたらいけないのです。女性の場合、考えたら恋愛はできません。

人間の魂は神を受け取ること、神を受けとめることが、天質です。この天質を裏切ってデカルトは「我思う故に我あり」と考えた。これがいけないのです。我思う故に我ありと考えると、人間は神の愛の方に目を向けようとしないで、自分の存在に目を向けることになるのです。神の愛を受けとめるための人格が、自分自身の存在を誇張するための人格に変わってしまうのです。

愛を受け取るための霊魂が、自分自身の存在を誇張して、それを神に押しつけようとするのです。悪魔的になってしまうのです。これが文明構造です。文明は見事に神を裏切っているのです。

私たちは日常の出来事を、素朴に受けとめるという霊魂本来のあり方を、そのまま生きればいいのです。神に愛されている事実を、事実として受け取っていけばいいのです。自分が今与えられているすべての事情境遇が、すべて愛であると考えたらいいのです。そうすると、その人格が生き生きしてくるのです。

人格が生き生きするということが、イエスの証につながっていく。そうすると預言の霊が与えられるのです。自分の人格が頼りない状態でしたら、イエスの人格どころではないのです。自分自身の気持ちを分かってもらいたいという事ばかりになるのです。

人間の人格は神のペルソナをそのまま受けとることができるのです。受けとめるということが、人間の人格の特長です。これが女性の性器に現われているのです。

女性の性器は受け取るための機能です。受けとめることが女性の性器の本質です。女性は性器のあり方と同じようになることが、骨の骨です。そうすると女性のすばらしさが現われるのです。男はこれを勉強するのです。その勉強をすると、骨の骨が自分に帰ってくるのです。そうすると無条件で、神とキリストを受け取ることがでるようになるのです。

神と人間との関係は、男と女との関係に移し変えられるのです。霊と誠をもって神を拝するというのは、人間本来の霊魂のあり方、人間の人格本来のあり方をそのまま示しているのです。

（内容は梶原和義先生の著書からの引用）