時間と空間の発生

聖書に、「神は、御使いたちを風とし、ご自分に仕える者たちを炎とされる」（ヘブル人への手紙１・７）とあります。

これは非常に重要なことです。御使いたちを風とされるということですが、御使いとあるのは神の使いですが、神の御使いという言葉の中には非常に大きい意味があるのです。

これはずばり端的に言いますと、例えば悪魔の一群も本来は、御使いたちという言葉の中に入るのです。英訳ではangelsとなっています。これはあらゆる使いたち全体をさしているのです。

これが風とされるとあります。風とは何でしょうか。これは霊の働きです。ヨハネによる福音書の第三章によりますと、そのようになるのです。風がどうして起きるのかと言いますと、空気が動くから起きるのです。動くとはどうなる事かです。風の場合の動き方はすべて大宇宙の物理法則の根源によるのです。端的に言いますと、循環するということです。回ることです。これが大宇宙の運動の法則の根源です。

風は回るのです。風地を巡ると伝道の書にありますが、風は地球を巡るのです。巡るということが、運動の原則ですが、これは宇宙法則の絶対原理の一つだと言えるのです。風は巡ることを意味するのです。

では、巡るとは何なのか。巡ることの本性は非常に示唆に富んだものでありまして、これは実は時というものの本性を端的に現わしたものだと言えるのです。

過去、現在、未来と時間が流れている。未来から過去に向って時が流れている。人間の感覚で言えば未来と思われる方向から、過去と思われる方向に向って時が流れているのです。

時が流れているという事の本質は何だろうか。これが従来の哲学者では分からないのです。アリストテレスも分からなかった。また、オーガスチンも分からなかったのです。神は自ら、私は初めであり終わりであると言っておられる。これはキリストの言葉とも受け取れますが、初めであり終わりであるという言葉は、時の本質をそのまま言い現わした言葉です。

時は非常に重要な宇宙の性質、宇宙的性格を現わしているのです。この本性が約束です。

約束は巡るのです。約束は未来をさし示すものですが、未来をさし示すということは、約束されたその時点から考えると、過去に立って未来をしめすことが約束です。

最もこれは人間的な言い方をしているのでありまして、神においては未来も過去もありません。神においては常時現在です。これが神です。

人間として見れば、過去と未来とは違います。過去的時点に立って、未来的時点をさし示すことが約束です。

例えばある人が「明日動物園へ行きましょう」と言ったとします。それは今日という時点に立って、明日の約束をしているのです。

約束の概念の中には、未来という概念がそのまま過去という概念に置き替えられるという必然性を持っているのです。哲理的に言うとそうなるのです。これが約束です。そうして同時に、これが風の原理です。

宇宙の動態は約束の動態によって規制されているのです。これが時の流れです。これは循環するという意味があるのですが、ただ無法則に循環しているのではない。例えば仏教で考える輪廻転生というような、生まれては死に、生まれては死に、ただぐるぐる回るというだらしがないものではないのです。

神の循環は、御霊による循環であって、終点をはっきり目指している循環です。

部分的に取り上げれば、輪廻転生的な哲理をも含んでいると言えなくもないのですが、全体的に見ますと、約束による時の循環は、宇宙法則の全体的な動的総轄を意味するのです。これが御霊の働きです。

御霊の働きというのはそういう膨大な遠大なスケールを持っているもので、これが風となって現われているのです。

この御霊の働きという遠大な動態の中には、約束が流れているのです。未来から過去へという時の流れというのは、神の約束がこういう形で流れているのです。神の約束が風となって流れているのです。

時というのは約束の流れです。その中には神ご自身のご計画、例えばキリストの完成、また、教会の完成という重大な問題もありますが、同時に悪魔とそれに属する者たちに対する裁きも含まれているのです。これが時です。

その次に、ご自分に仕える者たちを炎とされるとあります。ご自分に仕える者たちとは何かです。

先の文章では、御使いたちを風とするとありました。後の方では、自分に仕える者たちを炎とするとあるのです。

風に対してはエンゼルス（angels）という言葉を使い、炎にはミニスターズ（ministers）という言葉を使っています。ミニスターというのは仕える者ですが、政治的に言いますと、政府の大臣がミニスターです。これは政治に仕える者という意味でありまして、いわゆる政府の高官です。

神は神に仕える者を炎とするとありますが、これはどういうことか。炎というものの特質は何か。風の動態は巡ることです。炎の動態は英訳ではflame of fireとなっています。フレームということが炎です。

情熱の火という時にもフレームという言葉を使います。または恋人を意味する時にもフレームと言います。

烈火のごとく燃えさかるというのがフレームです。ファイアーがまた火です。燃やす火をつけるとも言えるのです。a flame of fire は、火のように燃える、燃やすという意味です。

これは物理的な運動の原理をさしているのです。これはカロリーのことです。これは宇宙のカロリーです。神に仕えるものたちだけをカロリーとして使うという意味です。

神に仕えるものたちという言葉の中には、悪魔は入っていません。神に直接奉仕している者たちが、宇宙のカロリーになっているのです。これは物理的運動の法則です。これは、巡るものではなくて、燃え尽きるものです。

フレームとかファイアーは、偉大な消耗の原理です。消耗していくということは、燃えていくことです。

風は循環無窮で働く永遠を意味しますし、炎は直線的に働く現前的動態です。

循環する働きと、直線的に働くことと二つあるのです。例えば、人間の存在を原理的に言えば、魂は生まれてきたのであり、また死んでいくのです。これは循環の法則に従って働く風のようなものです。

しかし毎日の生活を見ていますと、衣食住という営みにおいて、直線的に働く営みを、そのまま営ませられているのです。直線的に働く現前というものは、まっすぐに進んでいくのです。この現前的な働きと、循環的な働きとの二つの働きによって人生ができているのです。神による微妙な調和が私たちの人生に働いているのであって、これは宇宙存在の状態と同じことなのです。

天使の働きと神に仕えるものの働きと二つの働きがあります。これ以外の働きはないのです。これを現代的にしぼって言いますと、時間と空間になるのです。

時間は瞬間的に働くし、空間は直線的に働くのです。物が消耗するということは、直線現象を意味します。時が流れるというのは、循環現象を意味するのです。

直線現象と循環現象が時間と空間との働きになって、私たちの現実を造っているのです。

時間的な動きと、空間的な動き、循環する動きと消耗する動きの二つのものが色々な形でかみ合わせられて、現象世界ができているのです。

私たちが今経験している人間的現実は、時間と空間とが人間という形で経験させられているのです。人間がいるのかというといないのです。時間と空間との複合作用、相乗作用、相関作用が人間となって現われているのです。ただそれだけのことです。

これは人間の肉体だけではありません。地球が存在するのも、太陽系宇宙が存在するのも、すべて時間的原則と、空間的原則の二つのものの複合作用によるのです。

御使いとしての時間と、仕えるものたちとしての炎と、この二つのものがあるだけです。時間と空間の二つのものがあるだけで、人間の体にしても、時間として流れているものと、空間としてあるものとがあるのです。

空間というのは物質の三態を総称するものと考えて頂きたいのです。ガス体と液体と固体の三態が全体として空間を形造っているのです。物質の三態そのものが空間です。それと時間とが複合作用して物質ができているのです。

人間は食っては寝、食っては寝ていますが、食べるという物理的なものと、寝るという時間的なものが複合されて、人間の生理生態ができているのです。これが人間です。

人間がいるのではない。人間の生理生態があるのです。生理がある。また生態があるのです。宇宙物理が人間の肉体生理になっているだけのことです。

物理とは何かと言いますと、カロリーが、熱、光、動きになっているのです。あるのはカロリーと時の流れがあるだけです。

人間はいないのです。それを人間がいると考えている。もし人間が本当にいるなら、年を取って死んでいくということがあるはずがないのです。

人間がいないから死んでいくという現象が現われるのです。もし人間という固体的なものがあるのなら、死んでいかないはずです。生まれてきた。死んでいく。これは宇宙における人間存在としての循環の原理であって、流れているのです。

流れているという事実がある。時の流れと、物の流れです。エネルギーの流れです。これがあるだけです。従って人間はどこにもいないのです。

そこで考えなければならない事は、創世記の第二章十七節において、神が善悪を知る木の実を食べるなと言ったことです。それを食べたら必ず死ぬと言われたことです。なぜ善悪の木の実を食べると死ぬのかと言うことです。人間がこれが善だ、これが悪だと考える。これは利益で、これは損害だと考える。こう考えた時に、もう人間は死んでいるのです。ところが人間は、善悪の木の実を食べたくて食べたくてしかたがないのです。

女の人が三人、四人集まると、必ず人の噂をするのです。女の人は人の噂をすることが好きなのです。井戸端会議は人の噂をする会議です。これは善悪の木の実を食べる会食会みたいなものです。食べて食べて食べ尽くして、善悪の木の実がなくなるまで食べ続けるのです。

そうして自分の気持ちを、どんどん肉的な方へとかり立てていくのです。霊に従いて歩まずに肉に従いて歩むことを一生懸命に勉強するのです。

これは女だけではありません。人間全体はそういう実に浅はかな、さもしい考え方をしているのです。

これはすべて現象は実体だと思っているから、そういう考えになるのです。固有名詞の自分がいると思っている。また他の人間もいると思う。その人がライバルであり、敵だと思うのです。そこでその人をこき下ろすのです。

人をこき下ろすその人の心臓が躍っている。ところがその人は死んでいるのです。人の噂をすることによって、死ぬ稽古ばかりをしているのです。善悪の木の実を食べて、食べて食べ散らかしているのです。

善悪利害の木の実を食べれば、人間は現象が実体だと考えるに決まっているのです。現象を実体だと考えなければ、善悪の木の実を食べるとか、利害得失の判断をするということはありえないはずです。現象が実体だと思うから、善悪利害得失の感覚が起きることになるのですが、現象はどこを探してもないのです。人間の肉の思いの中にだけあるのです。

現象は人間の肉の思いの中だけにあるのであって、宇宙のどこにもないのです。

犬や猫の思いの中には、現象はありません。桜の花、バラの花には、現象という思いはないのです。彼らの中にあるのは、ただ時間と空間だけです。風と炎があるだけです。しかし人間の中には、風と炎の他に、現象感覚がこびりついているのです。

現象はどこにもないのです。ただ人間の思いの中にだけあるのです。五蘊があるのです。五蘊の中に現象が住み込んでいるのです。

この現象というものが、人間の五薀の中にどっかりと腰を下ろして、あぐらをかいて座り込んでいるのです。人間が現象意識を育てているのです。

竹は自分自身の中に真白い闇を育てている。純白の空洞を育てているのですが、人間は現象主義というどろどろとした思いを自分の中に育てているのです。これは地獄を育てているのと同じなのです。

人間は自分の中で地獄を育てているのです。地獄をだっこして、これをかわいがって育てているのです。利害得失を考えることは、地獄をだいていることです。地獄におっぱいをやって地獄を成長させているのです。

善悪の木の実を食べるなと言われている人間が、善悪の木の実を食べることが、好きで好きでたまらないのです。利害得失を考えることが好きです。地獄が好きなのです。死ぬことが好きなのです。

このようなばかなことをやめなければ、人間の魂は最も警戒すべき滅びの中にのめりこんでしまわなければならないのです。

ちょっとした物の考え方によって、今の救いの時を捉えるか、滅びの中を捉えるかが決まるのです。その人の判断によって自由に決められるのです。利害得失を当たり前のように考える原理は何かと言いますと、現象世界が存在するという誤った妄念によるのです。

現象世界は存在していないのです。ただ時の流れと炎の動きがあるだけです。時間と空間との相乗作用、相対作用があるだけなのです。これが私たちには現象世界となって感じられるのです。

神は御使いを風とし、ご自分に仕えるものたちを炎とした。宇宙にはこの二つのことがあるだけです。これを見分けることができる者を御子と言います。御子の国はとこしえに続くのです。

人間は時間と空間の流れを知るために、この世に遣わされたのです。魂が肉体をとらせられているということはこのためです。

肉体というのは時間と空間との相関作用による存在であって、これは固体的な存在ではありません。時間と空間との相乗作用を確認するチャンスとして、肉体があるだけです。肉体はただの現象です。

現象とは現われている像（形）です。現われている像としての肉体はありますが、存在する実体、実在する実体としての肉体はどこにもないのです。風があり炎があるだけです。

これを理解して、一切の善悪、利害得失から超脱し、神ご自身の御心を知るために現世にいるのです。

時の流れとは約束です。空間の働きは愛の表現形式です。この二つのことを弁え知って、自ら御子と同じものであることを悟り知るために、肉体をとって地上に現われてきたのです。

肉体をとってとは時間と空間の相乗作用においてということです。これが水と血との原理です。水と血の原理というのは時間と空間との相対関係、相乗作用をそのまま現わしているのです。

これが人間です。肉体人間が実体ではないのです。水と血との相乗作用による、時間と空間の相互作用による働きを認識するために、魂が地上に送られてきたのです。これが衣食住を与えられている意味です。時間と空間の本質を悟って、神ご自身の御名を賛美するためにきたのですから、このことをよく考えて人生を全うして頂きたいのです。

（内容は梶原和義先生の著書からの引用）