目は体のランプである

イエスは言っています。

「目は体の明かりである。だから、あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいだろう。しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、あなたの内なる光が暗ければ、その暗さはどんなであろう」（マタイによる福音書６・22、23）。

目は体の明かりであるという訳が間違っているのです。日本語の訳は、何のことか分からないのです。こんなことをイエスは言っていないのです。

ランプというのは、おまえが肉体で生きていることであると言っているのです。皆様が肉体で生きていることが、目で物を見ているような状態で生きているのです。これさえ分かれば、とこしえの命はすぐに分かるのです。ところが、分からないのです。

ボディ（body）は肉体だけを意味していない。生きている状態を意味しているのです。生きている実体をも意味しているのです。

私たちが生きていることがランプです。生きていることが見ていることです。経験していることです。経験しているとはどういうことかと言いますと、見ていることです。ランプです。

生きていることは見ていることです。食べていることも、聞いていることも、触っていることも、見ているのです。何を見ているのか。もしおまえの目が澄んでいればというのは、英訳では、if therefore thine eye be singleとなっているのです。ビーシングル（be single ）というのは、一筋にとか、一重に、真っ直ぐにという意味です。

なぜシングルという言葉を使っているのかと言いますと、人間の目の力というのは、一つしかないのです。一つしかないものを正しく見つけたら、これを正しく認識することができたら、生まれる前と生まれた後と、死んだ後、すなわち前世と現世と来世が、はっきり分かるというのです。

味がない世界、音響がない世界はあります。前世には音響がなかったし、味もなかったのです。物もないし、手で触ることもないのです。しかし、見るということはあるのです。どうしてあるのかと言いますと、私たちは生まれる前のエデンにおいて、見ていたのです。「女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われた」と書いてあるのです（創世記３ ・ ６）。

エデンに目があった訳ではないし、耳があった訳でもない。エデンで生きていたことはあるのです。それを目が知っていたのです。

皆様は前世で見ていたことが分からないでしょう。ところが、人間の目の働き、ランプとしての働きは前世にもあったのです。そこで、アダムは間違えたのです。目の働きがあったことをアダムは知っていましたが、ビーシングルで見ていなかった。すでに二つで見ていたのです。神の力によって、エデンの景色を見ていながら、自分で見ていると思っていた。目の働きが二重になっていたのです。これが陥罪の始まりです。

アダムは土で造った生き物に名前をつけた。肉の名前をつけているのです。自分が肉の気持ちで見ていたから、土で造ったものに、肉の名前をつけたのです。

馬を馬と見たらいけないのです。犬を犬と見たらいけないのです。イエスはそれに対して、いちいち名前をつけ直しているのです。イエスは犬を吐きたるものを食べる者だと言っている。犬に良きものを与えるなと言っている。犬に対してのアダムの見方と、イエスの見方とは、全然違うのです。アダムは犬が走っている格好だけを見て名前をつけた。イエスは犬という生物が持っている性根を見ているのです。

異邦人は犬です。この世が本当のものだと思って生きている者は、全部異邦人の犬になるのです。皆様がこの世の所帯とか、この世の仕事を信じたら、皆犬になるのです。犬は目の前にあるものをそのまま認めているのです。これが犬の浅見短慮です。

「犬に良きものを与えるな」。犬に御霊を与えると誤解するに決まっています。皆宗教になってしまうのです。キリスト教がそうです。カトリックがそうです。犬が御霊を与えられて、犬の立場から改革したのです。そこで宗教ができたのです。イエスはそれを非常に警戒していたのです。「犬に良きものを与えるな。犬に聖霊を与えるな」と言っています。

ペテロは弟子に対する考えが悪かったのです。ペテロの二代目か三代目の弟子が、ローマカトリックになったのですから、やはりペテロに責任はないとは言えないのです。ペテロは犬に良いものを与えた。これがいけなかったのです。

ビーシングルという言葉一つでも、今のキリスト教会は分かりません。私たちがエデンにいた時、アダムが善悪の木の実を食べる前に、見ていたのです。その見方に帰るのです。これがビーシングルです。動物に名前をつけた後のアダムはだめです。

リビングソールになった時のアダムは、ビーシングルでした。その時、アダムはエデンの太陽を見たのです。見るにうるわしく、食べるに良いもろもろの木を見たのです。その時、神の栄光がありありと見えていたのに、彼は神の栄光に従って木々の枝振りや、花を見ようとしなかった。神の栄光に従って、鳥の鳴き声を聞こうとしないで、自分の気持ちで聞いていた。これはビーシングルではない、ビーダブルでした。

神が見せている見解と、アダムが見ている見解と、二つの見解がエデンにあったのです。アダムが自分の見解を造った。人間の見解を造ったのです。

ビーシングルになれと言っているのは、神の見方と一つになりなさいと言っているのです。神の見方と一つになるなら、全身が明るいというのです。

神が命の息を吹き込んだ。吹き込まれた命の息を、そのまま神の命として用いればよかったのです。神からの命の息として用いずに、自分が見ていると考えた。そこで、「人が一人でいるのは良くない」と言わなければならなくなったのです（創世記２・18）。園の真ん中に二本の木を生やさなければならなくなったのです。

元々、二本の木を生やす必要はなかったのです。目にうるわしく、食べるに良いという木が先に生えていたのですが、その後に、園の真ん中に木が生えてきたのです。園の真ん中の木は、後から生えているのです。目にうるわしく、食べるに良いという木を、神の御心どおりに真っ直ぐに見ることができたなら、命の木を吹き込まれたその感覚が、そのままアダムの命になったはずです。そうすれば、園の中央に二本の木を生やす必要はなかったのです。

二本の木というのは、人間のハートの真ん中に、霊の直感力と肉の直感力の二つがあることを意味するのです。肉の直感力を用いてはいけないということは、後から言っているのであって、霊の直感力のみを用いる人間であったら、肉の直感力を用いてはいけないという必要がないのです。

アダムが命の息を吹き込まれたままの状態でいたら良かったのです。ところが、そうではなかった。アダムはふっと自分を意識し始めたのです。これはアダムにとって、必然的な試みであったのかもしれないのです。

神がアダムをエデンに置いた時に、アダムを悪魔と勝負させようという気持ちがなかったとは言えないのです。従って、アダムの中に二本の木が生えたことは仕方がないのです。しかし、命の木を吹き込まれた時に、ほっと目が開いた。この時の見方が本当の見方だったのです。

しかし、若干の時間が経過したことにより、アダムは自分の見方を造ってしまった。そこで、神は善悪を知る木の実を食べてはいけないと言わなければならなくなったのです。

この時、アダムはボディの働きがランプであるということが分かっていたのです。イエスはマタイによる福音書の六章二十二節で、生まれる前の目の機能のことを言っているのです。

人間が母の胎内にいる時には、善悪の木の実のことを考えなかったのです。この世に生まれてから、これを考え出したのです。生まれる前の五官の本能で見ていれば、生まれた後の見方が五蘊です。般若心経の五蘊皆空の根本的な説明は、生まれる前のことから考えなければならないのです。

人間は生まれる前に、無明の中に落ち込んでしまった。大乗起信論では、人間は無明から生まれたと言っています。無明から生まれたとはどういう意味なのか。無明から生まれたというのは、生まれる前に人間は罪を犯していたということです。

人間は生まれる前に罪を犯して、無明状態になっていたのです。無明状態で生まれた人間は、初めから原罪の虜になっていたのです。これを大乗起信論は言いたいのですが、無明の本体は何かということの説明ができないのです。インドでも無明の説明をしていません。

無明とは目が見えないことです。目が明らかに見えないことをいうのです。これは前世に溯らなければ説明できないのです。仏教は神と人間が別々になった状態で、人間が生まれてきたと言っている。これが無明です。現世に生まれてから人間の根源を確かめて、無明の原因をなくしてしまうということは、よほどの人間でないとできないのです。

皆様の今の状態でも難しいかもしれません。前世がよく分かっている人なら、人間は前世で間違えた、無明になったということが分かるのです。

まず前世が清められるのです。あなたの目がビーシングルであるならとは、前世で目が開かれた状態がそのまま現世に移行しているということです。そうしたら、全身が明るいだろうと言っている。全身とはホールボディ（wh0le body）です。ホールボディとは、人生のあらゆること、過去生、現生、来生に関するすべての人生の見通しが、ずっとつくようになることです。

今皆様が目で見ているだけではありません。体で寒いと感じていることが見ていることです。目で見なくても、霊で見ているのです。人間が生きているのは、全部見ているのです。食べることも、匂いを嗅ぐことも、料理をすることも、仕事をすることも、一から十まで全部が五官の働きです。五官の働きの他には何もありません。生まれる前の五官の働きで生きている。つまり、皆様が生きているのは、生まれる前の状態をそのまま生きているのです。

ところが、この世に生まれてから、固有名詞の自分がいると考え出した。こんなばかなものがどこにいるのかと言いたいのです。固有名詞の自分がいると考える。自分の妻がいる。自分の夫がいる。自分の生活がある。自分の仕事があると考える。これはすべてビーシングルではないのです。

ビーシングルというのは、ザ・リビング（生かされていること）だけを見ているのです。ザ・リビングがビーシングルです。リビングということだけがあるのです。肉体がある。家庭がある。仕事があると考えなくてもいいのです。リビングの他には、考える必要がない。考えてはいけないのです。

ビーシングルで見ようとしたら、エデンの園の感覚をもう一度取り戻して、その感覚で見るのです。これが本当の霊の思いであって、肉の思いには関係がないのです。こうすると、女の人がすべて骨の骨に見えるのです。女性のすばらしさが見えるのです。何とすばらしいものかが分かるのです。

女性がすばらしいというのは、エデンにおける陥罪前のアダムの見方を言っているのです。アダムはエバを見て、骨の骨と言いましたが、アダム自身によく分かっていなかったのです。この時、アダムは骨の骨、肉の肉と言いましたが、二つの見方ができると言ったのです。目に見えない状態で女を見るのと、目に見える状態で女を見るのと、二つの見方ができると言ったのです。

女の人は、十七、八才の娘さんでも、八十才の老人でも、共に美しいのです。皆様が現世に生きている姿を見て下さい。イエスがボディはランプだと言ったのです。これはどういう意味か。私たちがボディを持って生きている姿を眺めてみると、生まれる前のエデンの状態を、そのまま示しているのです。これが人間の衣食住です。見ることも、食べることも、エデンでしていたことを、そのまましているのです。

人間が現世でしていることは、その人が生まれる前にしていたことを、そのまま実行しているのです。ただやり方が違うだけです。実行している世間の相手が違うだけです。仕事の内容とか、直感力は同じです。

そこで、ビーシングルという見方になれば、生まれる前の自分が開かれる。そうすると、現世を去った後に、生まれる前に帰れるに決まっているのです。ここしか行く所がないのです。死んでどこに行くのかと聞く人がいますが、そういう愚かなことを考えてはいけない。出てきた所へ帰るに決まっています。

ところが、現世で肉体を持って生きている自分が本当の自分だと思っている者は、天へ帰れないのです。五官の直感と、現世の常識とダブルになっているからです。ダブルになっている人が天へ帰ったとしても、全く盲目になって帰るのですから、困るのです。

生まれながらの盲人である皆様の目が開かれるということが、一番有難いのです。神の栄光が現われるからです。生まれながらの盲人である皆様の目が開かれて、前世が見えてくる。これさえできればいいのです。

今生きているというのは、前世に生きていたのと同じことをしているのです。従って、自分はいないのです。アダムがいただけです。自分は全くいない。また、肉体もないのです。ただ肉体があるという形で試みられているのです。

ビーシングルができたら、過去、現在、未来を貫いて見ることができる。そうすると、全身が明るくなるのです。あなたの目が澄んでいれば、全身も明るいだろう。過去、現在、未来の自分のあり方がすべて見えるから明るいのです。ところが、あなたの目が悪ければ、全身も暗い。もしあなたの内なる光が暗ければ、その暗さはどんなであろうと言っています。その暗さはどんなであろうというイエスの言い方は、意味深長です。これが悟れる人はめったにいないからです。

内の光が暗ければと言っておきながら、その暗さはどんなであろうかと、なぜ言っているのか。その暗さとは、死んでから、つまり、現世を去ってからのことを言っているのです。

死んでからの暗さはどんなものであるのか。イエスから見れば、死んでからはないのです。現世に生きていることが前世に生きていることです。前世に生きている状態が現世になっている。この世を去っても死んだことではないのです。

「霊によりて生まれるものはかくのごとし」。将来はどうなるのか。どこからきたかはどうでもいい。そんなことを考えなくても、今日生きていることだけでいいのです。

今生きている。これだけしかないのです。人間の命は今生きていることだけです。今生きていることが霊です。目が見えることが霊です。耳が聞こえること、舌で味わえること、触れることが霊です。皆、霊です。これがはっきり分かれば、霊から生まれることができるのです。これが分かれば、全部分かるのです。

（内容は梶原和義先生の著書からの引用）