絶対に死ぬ命と絶対に死なない命（２）

生まれる前の自分の命とはどういうものか。神の子としての魂の本性とはどういうものかを弁えると、死なない自分を見つけることになるのです。

魂の本性としての自分は生まれる前の自分です。それが本能的な自分であって、先天性の自分です。これが五官の働きになって現われているのです。これが、ザ・リビングです。これはこの世に生きている人間とは違います。この世に生きている人間は田中太郎という固有名詞がある人間です。田中太郎という固有名詞がある人間と、皆様の心臓が動いていることとは、何の関係もないのです。

自分の心臓が動いているという事と、固有名詞でこの世に生活していた人間、市役所の戸籍に掲載されている人間とは、何の関係もないのです。場合によっては、心臓を手術することができます。戸籍台帳に載っている人間は、手術できないのです。これは死ぬに決まっている自分です。

戸籍台帳にある自分は、この世のお付き合いで生きている自分です。これは死んでしまうに決まっている自分です。これを早く思い切るのです。思い切ると言っても、首を吊ることではありません。これは仮の自分、嘘の自分であると断定してしまうのです。

この世に生きている間は、田中太郎という固有名詞が必要です。それはこの世で本当の命を見つけるための道具なのです。見つけてしまったら、田中太郎は必要ないのです。田中太郎でなくなったらいいのです。これを空じるというのです。これが本当の無為です。

自分の心臓が動いていることが無為です。これが分かると、本当の命が生まれてくるのです。無為から命が生まれてくるのです。人間の心理機能、生理機能が先天性の命の働きです。人間の常識や知識は機能とは違います。常識と知識は心理機能から出てきたものです。

機能としての命が本当の命です。これは世界に一つしかありません。砂糖は何処へ行っても甘いのです。砂糖が辛いという人はいないでしょう。黒人も白人も、アジアの人々も、砂糖はみんな甘いと思うでしょう。これが命です。命は世界に一つしかありません。これを見つけるのです。これは分かり切ったことです。一つしかない命を見つけて、それが自分の中にあることを悟るのです。これは一番分かりやすいことです。

現世で肉体的に生きている私は、この世の常識で生きている私で、死ぬに決まっています。死ぬに決まっている自分を、わざわざ自分と思うことをやめて頂きたい。その自分を捨ててしまって、機能的に生きている自分、ザ・リビングを掴まえるのです。

リビング（living）が自分の実体です。これは生まれる前から続いているのです。現世を去っても続いていくのです。この世で本当のリビングを見つけますと、魂の本体が分かります。魂の本体が分かりますと、死なないことがはっきり分かるのです。

人間は死にますが、魂は死なないのです。霊魂は不滅です。ところが、人間がどうして地球に発生したのかということです。老子は色々なことを論じました。無為が有為を生む。有為が滅為を生む。滅為が空を生むのです。空がまた、無に変化します。こういうことを、老子は論じましたが、なぜこのような循環する因縁があるのかということです。

これを弁証法と言いますが、弁証法的原理がなぜ地球に存在するのかという説明がいるのです。老子もマルクスも、他のどんな偉い学者も、これができていないのです。

なぜそのような因縁が存在しなければならないのかという事です。命とは何かという本質論です。命は地球にしかありません。火星にも金星にもありません。なぜ地球にしか命はないのかという因縁です。いわゆる太陽系宇宙の因縁ですが、この説明が老子にはできなかったのです。

人間としての説明ができても、世界歴史の説明ができなければいけないのです。これはユダヤ人問題が分からなければだめです。地球の因縁、人間の因縁、神の因縁です。縁はどうして発生するのか。聖書はあらゆることを説明しているのです。キリストの復活が地球上のあらゆる命、法則の原理、政治、哲学の原理になるのです。キリストが地球計画の結論です。これを勉強して頂きたいのです。

人間の命は現世だけのものではありません。地球の説明ができなければいけないのです。万物がなぜ存在するのか。人間と万物との関係はどうなるのか。万物が存在することと人間の命とは、一つの命です。だから、人間は何でも食べられるのです。人間ほど何でも食べる生き物は他にはいないでしょう。それは、人間の肉体は地球のあらゆるものに妥協する性質を持っているからです。地球に存在するあらゆる要素を肉体は持っている。鉄も石も、ダイヤモンドも人間の体の中にあるのです。

人間が生きていることと、地球があることは一つです。これを命というのです。こういう見方が老子にはできていなかったのです。死んだら、人間の魂はどうなるのか。地球は将来どうなるのか。これが老子には分からなかったのです。聖書を見れば分かるのです。

皆様の命は万物の霊長としての命です。だから、人間のことだけが分かってもだめです。万物と人間との関係が説明できないといけないのです。人間は何でも食べます。何でも食べますから、万物に対して責任を負わなければならないのです。人間の肉体に奉仕していた万物に対して、どういう恩返しをするかです。その方法が分かっていなければいけないのです。その方法が分かって、本当の悟りと言えるのです。

現世で無とか空とか言ってもだめです。永遠の悟りがなければならないのです。人間は万物の王として、永遠に万物を支配する場に座らなければならない責任があるのです。

万物の霊長は地球だけの問題とは違います。もっと大きいものです。万物の霊長として、自分を完成しなければならないのです。

イエス・キリストの復活は、万物の長として自己完成をしたのです。イエスが死を破ったことが、たった一つの地球上の人間完成の典型的な見本です。復活が分からなければ、命の行く末は分かりません。どんな名人でも、どんな達人でも、イエスの復活が説明できなければだめです。人間は何かを得ると、得たものに取り殺されるのです。食卓は汝らの罠になるのです。生活が罠になる。生活の奴隷になっているのです。

無門関四十八則にありますが、趙州(じょうしゅう)和尚が草履を頭に乗せて、お前たちの考えはこうだと言ったのです。生活のために生きているのは、生活を頭の上に乗せているのです。生きるためには食べなければならないと言いますが、真面目に働いていれば必ず食べられるに決まっています。これが天下の法則です。天下の法則を考えないで食べなければならないと思っている。これが間違っているのです。

食べるというのは、履くべき草履です。生活のために働くと言いますが、生活というのは草履です。これは足に履いて歩くべきものです。食べるために一生懸命に働くというのは、草履を頭に乗せているのです。

今の人間は皆草履を頭の上に置いています。食べなければならないと考えずに、命を見ようと思えばいいのです。命が分かりさえすれば、勝手に食べられるのです。

地球上にある一番大切なものが命です。一番大切なものを第一にするという気持ちさえあれば、勝手に食べられるのです。これが天下の法則です。人間は働くために生まれてきたのではありません。命を掴まえるために生まれてきたのです。

釈尊も老子も本当の命に生きていなかった。だから死んでしまったのです。ソクラテスもマホメットも死んだのです。死を破ったのはイエスだけです。イエスを勉強する以外に、死を破る方法はありません。

イエスが言っている言葉より、大乗仏教の理論の方が広範と言えるかもしれません。十二因縁とか四諦八正道という説明は聖書にはありません。イエスはただ素朴に命の実物を生きていたのです。その証拠に彼は一度死んだが、死ぬべき人間ではないことが明らかになったので復活したのです。イエスが死を破ったというのは、死ななかったのではなくて、死んでから死を破ったのです。はっきり死を乗り越えたのです。イエス以外に死を乗り越えた人はいません。皆様もイエスの真似をすれば、死を破ることができるのです。

死ぬのが嫌だというのなら、聖書を勉強するしかないのです。死を破ることが聖書の目的です。聖書を勉強すれば、自分自身が自分ではないことが分かる。自分の実体がイエスであることが分かる。そうすれば、死ななくなるのです。

自分自身が自分である間はだめです。固有名詞の自分は死んでしまうに決まっている自分です。皆様の中に本願があります。人間の魂の本当の願いが本願です。魂は死にたくないと切願しています。仕合せになりたい、自由になりたいと願っています。これが人間の本願です。なぜそう思うのかと言いますと、今生きている自分が不幸であることを知っているからです。今生きている自分が不自由であるから、自由になりたいと思っているのです。

死にたくないという気持ちは分かりやすく言いますと、死ぬという運命から解放されたいという気持ちです。死ぬという宇宙的な宿命から解放されたいのです。これが人間の本願です。お金がなくても、地位や名誉が得られなくても、死ぬという運命から解放されたらそれでいいのです。例え病気になっても構わないのです。

死ぬというのは、人間に対する決定的な、宇宙的な運命です。人間だけが遭遇する宇宙の運命です。犬や猫も現世を去りますが、人間が遭遇する死ではないのです。犬や猫は死なないし、死んで地獄へも行かないのです。

皆様は何十年もの間この世に生きていたので、色々と苦労があったでしょう。どれだけ苦労しても、何を勉強しても、死ぬということから逃れることはできません。絶対にできません。自分が自分であるからです。自分がいると思っている間は、死ななければならないのです。自分が他人であることが分かってくると死ななくなるのです。

皆様は今まで長い間、自分がいると思っていました。ところが、自分はいないのです。心理機能、生理機能が魂の本体です。魂の本体というのは、地球上に一つしかありません。一つの命を全世界の人間が分散して持っているのです。命の本体、本質は一つです。

人間は自分が生きているという考え方、固有の観念に束縛されているのです。自分が幸せになりたい。自分が悟りたいと思っているのです。自分が悟らなければならないと考えてはいけない。自分が悟った所で仕方がないのです。自分という気持ちがあるだけで、地獄へ行かなければならないのです。

命は自分のものではありません。宇宙のものです。太陽が輝いていることが命です。花が咲いていることが命です。命は自分のものではない。だから、自分が生きているという考え方が間違っているのです。自分が悟ろうと考える。これが間違っているのです。

皆様がこの世に生まれてきたことに、老子は無為という理屈をつけたのですが、大体無がどうしてあるのか。無がどうして人間を生むのか。無為がどうして起こるのかという根本的な原因を、老子は説明できなかったのです。彼は命を知らなかったから説明できなかったのです。

老子はすばらしい理屈を並べましたが、理屈は命ではないのです。理屈を知らなくても、命が分かればいいのです。私たちに必要なものは命であって、理屈ではないのです。

人間の本願はどこから起きてくるのか。現生です。現生は天然現象の命を意味するのです。現生は生まれる前の命が、今現われている状態を言います。

生は五官の働きの本質を言います。命は今生きている状態です。生が基礎になって命があるのです。命はやがてなくなるのです。だから、命がある間に生を見つけたらいいのです。生を見つけることが人間の本願です。

生は宇宙のもので、これを見つければ死なないのです。皆様が現世にいる間に生を見つけるのです。宇宙にはいのちの総本家があるのです。例えば、皆様の各家庭には水道の蛇口があります。蛇口をひねると水が出るのは、蛇口が水源地につながっているからです。大阪の場合は琵琶湖につながっているのです。琵琶湖や淀川がなかったら、大阪の水源地もないのです。

水源地がなかったら、皆様の家庭に蛇口があっても無意味です。皆様が生きている一人ひとりの命は、各家庭にある蛇口のようなものです。それが水源地につながっているのです。その水源地を探り当てて命の本体が分かりますと、死ななくなるのです。心臓が止まろうと、脳がだめになろうと、関係がありません。命のあり方を見つけたら、それを魂と一つにしたらいいのです。

命は本質的に遺伝子の基礎になるものです。遺伝子は命を物理的に、生理的に顕現するための要素です。遺伝子の本質は言葉です。言葉の種類はたくさんあるのです。色々な遺伝子があります。それが物体となり、形態となっています。これは現在の地球の構造からいうとそうなるのですが、地球がなかった時にも遺伝子はあったに違いないのです。

物があることの本体は何か。おのずからです。地球ができる前におのずからがあったのです。ところが、おのずからが神という形で、自己認識を持たざるを得ないような事情が起きたのです。宇宙に死の法則が発生したからです。そこで、おのずからが死という法則を絶滅させてしまう必要が起きたのです。死という法則が自分の間違いを認めて、死そのものが自滅してしまうように仕向けなければならない必要性が起きたのです。

死の法則が悪魔です。悪とは死ぬことです。死ななければならないのが悪です。どこにいるのか分からないから魔というのです。悪が魔としているのです。

人間が死んでいくに決まっているということが、悪魔がいる証拠です。これが宇宙に発生したので、おのずからがただのおのずからではなくなったのです。おのずからの働きによって、死の則を絶滅させる以外に、死を消滅させる方法がないのです。そこで、おのずからがみずからになったのです。これを神というのです。

おのずからがみずからとなった。みずからというのが生の本体です。生の本体はおのずからでしたが、みずからとして自覚しなければならなくなった。そこで、神が我と言い出したのです。おのずからが自分という人格に変わったのです。自分とはみずからということです。

なぜ悪魔が宇宙に出現したのかと言いますと、これが宇宙進化の法則です。悪魔が出てこないと宇宙は進化しないのです。なぜ宇宙が進化しなければならないのか。すべて宇宙には顕在的、潜在的に必然性があるのです。地球ができるには地球の必然性があったのです。地球ができた事によって、皆様が生まれたのです。

皆様は地球から湧いて出た生物です。自尊心とかプライドとか言いますが、ただの生物です。地球があるから人間が生きていられるのです。だから、地球の説明ができなければだめです。

おのずからがみずからになったことを神というのです。これは極めて自然の現象です。神が神であることは、自然が自然であることと同じことです。

私がいう神は、日本にある八百万の神とは全く違います。八百万の神は紙屑みたいな神です。聖書の神と八百万の神は位が違います。宗教の霊は日本にはたくさんあります。そんな神も霊も、聖書の神には太刀打ちできないのです。人間の思想は霊です。老子の思想は老子の霊です。

宇宙には現生があります。皆様が今生きておいでになるのは、天然自然から派生してきたのです。これを個々の人間として経験しているのです。

この世に生まれてきた時に、宇宙の生が皆様の命の中心に植えられているのです。これを言(ことば)と言います。宇宙の本当の生の働きが、遺伝子になっているのです。皆様が承知してもしなくても、皆様の命は生の続きであって、本質は言です。理性、良心は言です。感情も記憶も判断も皆言の働きです。これが皆様の中に本願として存在しているのです。生まれる前の命の感覚が、本願として皆様の魂にあるのです。

皆様がこの世に生まれたのは、自分の意志ではありません。宇宙の生が皆様という格好で現われているのです。だから、自分が生きているという気持ちは間違っているのです。

天然自然のおのずからがみずからとして自覚するようになった。おのずからは自覚的に存在しません。みずからとなると自覚が存在するのです。これが神です。神の感覚が皆様の中にそのままあるのです。だから、皆様は自分の命の本当の姿を知りたいと願わずにはいられないのです。

死にたくないというのは、死ぬのが辛いということよりも、本当の事を知りたい、知らないうちは死ねないという気持ちなのです。死というのは、本当の命を知らないままでいることです。皆様はこの世に生まれた時に、先天性の生の原形を持って生まれたのです。これが本願です。この本願がある以上、本願どおりに行動すれば、死なない命が見つかるに決まっているのです。

皆様の魂は命の実体を正確に捉えているのです。世界中の人間が砂糖をなめれば甘いと感じます。命は世界中に一つしかないのです。この命の本来の姿に帰ることが、生まれる前の父ぞ恋しきということです。難しい理屈を色々考えなくてもいいのです。

老子は東洋で生まれた哲学者としては、最も優れた一人でしょう。孔子や孟子は生きている人間生活のことを色々と説いたのです。孔孟の教えは生活の教えです。老子は命の教えが必要だと考えた。孔孟の思想には命の根本を掴まえようとしない大欠点があるのです。これが儒教です。

儒教の間違いを訂正して、儒教がふれていないことに老子はふれようとした。同時代に釈尊がインドで生まれたのです。また、同じ時代にギリシアではソクラテスが生まれているのです。ソクラテス、釈尊、老子の三人は哲学的に飛び抜けているのです。ところが、このうちの一人も命の実体を掴まえていないのです。

同じ時代に一人、ユダヤでヨエルという預言者が現われて、「人間が新しくなる。人間の歴史が新しくなる。地球が新しくなる」と預言したのです。

ヨエルの預言は、人間の命が新しくなると言っているのです。人間としての最高峰は東洋的には老子です。インド的には釈尊です。釈尊の思想は東洋の思想というより世界的な思想です。釈尊はアーリア人種ですから、東洋よりもっと高い位置にいたでしょう。釈尊、老子、アリストテレスは人間として最高の学識を世界の文化に提供しているのです。

ヨエルは人間存在の本質が、全然別のものになると預言したのです。これがイスラエルの神の特長です。老子とヨエルが違うほど、一般の思想と神の約束の思想とは違うのです。

（内容は梶原和義先生の著書からの引用）